たかお動物病院 院長ブログ / BLOG

動脈管開存症(PDA:Patent Ductus Arteriosus)、心室中隔欠損症(VSD:Ventricular Septal Defect)の症例

2021/10/13(Wed)

先日、他院から心雑音の指摘を受け当院に来院された子犬さん。
心エコー検査をはじめとする心検査を行い、『動脈管開存症(PDA)とII型の心室中隔欠損症(VSD)』と診断し、翌日に開胸下での動脈管結紮術を行いました。VSDはKirklin況燭嚢いにも欠損孔の大きさは小さく、短絡血流量もそれほど多くありませんでした。しかし、PDAとVSDが合併すると左心系にかかる血液の容量負荷は増大し、左心不全を引き起こす可能性が高く、長期放置しておくと肺高血圧症を合併し、手術時期を逃してしまい、完治させることが不可能となりますので、来院翌日に手術を行いました。
実際に開胸してみると、むむ?、普段見慣れないような血管を発見。
かなり希にあるのですが、PLSVC(左前大静脈遺残)もこの症例は合併していました。
この血管異常は命に関わるような奇形ではないのですが、これがあると、左頸静脈からの右心系へのアプローチが出来ません。あと、今回のような心臓外科時に視野の観点でジャマになることも。
うまいことこの血管を牽引し、動脈管周囲を剥離し、直接結紮できました。
術後、一時的な高血圧が認められましたが、内科治療でカバーでき、その後の経過は良好で、先日退院しました。


食欲廃絶と呼吸困難

2021/10/02(Sat)

先日、呼吸が荒く、また、食欲が全ないということで来院された症例です。
かかりつけでは僧帽弁閉鎖不全からの肺水腫とのことで薬を処方されたらしいのですが、良化の兆しがなく、不安に思い当院を受診という状況のようでした。
まず、胸部を聴診したのですが、そもそも心雑音がなく、肺の音がプツプツとした水泡音の様なものが聴取されまして、いざレントゲンを撮ってみると肺の方は全体的に不透過性が亢進しており、レントゲンで矢印の部分である主肺動脈がぽっこりと突出していました。


その後、心エコー検査を行うと、僧帽弁逆流は僅かにありますが、肺水腫を起こすようなひどいものではなく、わずかな逆流量でありました。しかし、矢印のように心室中隔が扁平化しており、主肺動脈(MPA)もかなり拡張してました。


診断としては『肺高血圧症』であり、肺の病変から2次的に起こる心臓の変化であります。
肺に炎症や腫瘍、寄生虫の寄生などがあり、肺動脈が血栓など目詰まりをおこすと肺血管の抵抗が高くなり、右心系に負担を示すようになります。犬の肺高血圧症で代表的な病気はフィラリア症がありますが、この症例は毎年フィラリアの予防はされているため、フィラリア症の可能性は低いと考えます。おそらく、なんらかの肺の疾患がこのような病態を招いたんでしょう(今後精査のためにCT検査を受けて頂くよう飼い主さんにはお伝えしています。)。治療は入院で酸素室下で管理し、肺血管を拡張させる薬と消炎剤、抗生剤で治療を行いました。下記が退院時の検査所見ですが、心室中隔の扁平化、肺の不透過性の改善が認められ、ご飯もよく食べるようになりました。




肺高血圧症の病態ですが、肺高血圧症になると肺に血液が正常時より流れにくくなります。そうなると、左心房、左心室に入る血液量は少なくなります。ということは、全身の動脈血液量は減っている状態です。こういう風になると臓器障害も出やすくなりますし、消化管の動きも悪くなるため、食欲は廃絶します。肺が白いからと利尿剤なんか使うと臓器不全(特に腎臓)を起こしやすくなるために、利尿剤の使用は注意が必要なんですよね。今回の症例に関しては利尿剤は一切使用していません。やはり、病態を根本から考える治療を施さないとダメですね。今日はわりとゆっくりと時間がありましたので、色々と書かせてもらいました。また、時間があるときにまた、ゆっくりと病気(循環器の病気がメインとなるかもですが…汗)の紹介をしていきます。
たかお動物病院
院長 高尾 紘一郎


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